福岡県田川郡川崎町小峠産ツコ石です。このツコ石を見たり聞いたことがある方は極めて少ないでしょう。ツコ石Thucholiteという変わった名前は成分であるトリウム（Tｈ）、ウラン（U）、炭素（C）、水素（Ｈ）の頭文字を並べたもので、焦性瀝青（炭化水素）のウランを含む変種とされます。以下の昭和12年に木村健二郎、飯盛武夫先生による日本化学会誌の論文を参考にして下さい。長文で申し訳ありません。
「東洋産含稀元素鑛石の化學的研究(其二十六)幅岡縣安眞木村産閃ウラン鑛,モナズ石及びツコ石に就て」より抜粋。
小峠産の閃ウラン鉱試料中には前項（略）に述べし如く６規定硝酸に溶解し難き部分あり.此の残滓は無色にして重き晶状物質と黒色にして軽き物質とより成る.残滓の大部分を占むるものは前者にして。久野久氏の鏡検の結果によれば（中略）此の結果により此の鉱物がジルコンなることを確定するを得たり。他の黒色の残滓は比重小にして溶液と共に回転すれば容易に液中を游動し白色の残滓は液底に留るが故に溶液を回転しつつ注意して濾別して黒色の残滓を集め之を乾燥してその放射能を測定したるに甚だ強し。又之を焼灼しなるに黒色は消失し白色にして所々に淡褐色の斑點を有する灰を残留せり。此の次を硫酸及び弗化水素酸にて處理したるにその重量の約そ五分の一を減じたり。上記の実験は此の鉱物が珪素,放射性元素及び恐らく炭素を含有することを示すものなるべし。次に更に詳細にその含有元素を確定するため下記の諸実験を試みたり.先づ小峠産閃ウラン鑛0.8844gをとり之を6規定硝酸にて処理し不溶残滓の中,黒色の部分のみを磁製濾別坩堝を用いて濾別し,電気炉中にて110°に加熱乾燥後秤量したるに0.0017gを得たり．即ち此の黒色鑛物は閃ウラン鉱試料の約そ0.2%を占むるに過ぎす。更に電気炉の温度を上昇して加熱を続けたるに300° ～330° に於て0.0014gとなりたれど黒色の外観は變らす,450°～550°に於て白色の灰のみを残し、その重量は0.0007gとなりたり。即ち炭素の燃焼する温度に於て急激なる重量の減少を示し,最初の重量の約40%に相当する灰を残すことを知る。又別に閃ウラン鉱0.9204gより分ちたる黒色鉱物を用い,安藤鋭郎氏を煩して含窒素有機物用微量分析装置により炭素の含量を定むることを得たり.安藤氏の分析結果は次の如し。CO2:0.001776g; C:0.000484g.即ち炭素の含量は閃ウラン鉱試料の0.0526gに相当す。次に此の黒色鉱物を焼灼して得たる灰を炭素棒に埋めて電極とし弧光スペ クトル写真を撮影したるにトリウムの多数の線,稀土類元素の線を認め,尚確実に鉛に由來する線一本を検し得たり。又別に灰をX線管の封陰極部に置き前項 閃ウラン鉱の場合と等しき実験条件にてランタニド諸元素のL系列Ｘ線スペクトル写真を撮影したり。撮影したるスペ ク トル写真は大体に於て小峠産閃ウラン鉱のそれに酷似し,唯 ランタンの線のみは閃ウラン鉱の場合に比し少しく強くなりたり。上述の結果を綜合すれば此の鉱物の組成は大約第4表の如く推定せらる.第4表（略）試料不足にして今日之れ以上の実験を継続し能はすと雖も此の結果より見るに此の鉱物は恐らく東洋産含稀元素鉱石の化学的研究（其二十 六) 1139花崗岩ペグマタイトより産出する含炭素初成鉱物として報告せられしツコ石(Thucholite)に類するものなるべし.之れ此の種の鉱物の本邦に於て産出を見たる最初の例なり筆者等は更に試料を蒐集し詳細の実験を行ひたき希望なり
・・・との事で、小峠の閃ウラン鉱を酸で処理したら、溶けないものが２種類あり、大半が無色のジルコンで、残りが黒いツコ石との事です。ツコ石は私が昔から注目していました。発端は国産鉱物を網羅した小冊子です。その有機鉱物の項目にウランを含んだツコ石が記載されていました。それで興味を持ちました。本標本は昔、老舗標本店（廃業）で販売されたものを別のコレクター経由で入手したものです。著名標本店のラベル付きですので、ある程度の信頼性はあるかと思いますが、どのように同定したかは判りません。少なくとも昭和12年当時と比べて、入手が今から40年くらい前とは言え、分析方法は飛躍的に進歩している筈ですので、もっと簡単に確実に決められるのかもしれません。どこに付いているか説明の難しい標本ですので、どこがツコ石だというような具体的な説明は出来ません。恐らくペグマタイト中の黒い点（閃ウラン鉱？）の可能性はありますが保証はできません。ガイガーカウンターに反応します。ツコ石についての詳細は以下の海外サイトをご参照下さい。但し、英文です。Thucholite: Mineral information, data and localities. (mindat.org)

サイズ：約8cm×6cm×3cm サイズはスケールでご確認下さい。重量： 約200グラム（標本全体の重量）
尚、以下の点にご留意下さいませ。・鉱物種や産地は特段の記載ある場合を除き、入手時の情報や肉眼鑑定にて 表示しております。当方にて分析などの“追試験”は行っていません。・私が採集したものではありませんので、産出時期や産出地点などの詳細データはありません。・信頼できるところから入手した標本ですが、具体的な説明の難しい標本ですので、本鉱について知識をお持ちの方、ご自分で調べられる方の応札を歓迎します。・寸法や重量は定規や百均のキッチンスケール、ヘルスメータ等で簡易に 計ったものですので誤差もあり、参考程度にお考え下さい。・ヤフオクの「商品の状態」は「目立った傷や汚れなし」と表示されていますが、 天然の鉱物ですので、キズやクラック、欠け、汚れ、錆び、変質、出品者が 認識できなかった補修などの可能性がございます。・写真と実物で色やテリ等が変わる可能性がございます。・完品や一級品をお求めの方、鉱物種に高い確実性を求められる方、細かな点を気にされる方は入札をお控え下さい。・真贋やグレード等入札者様のご評価ご判断の上、ノークレーム、ノーリターンを ご承諾頂ける方 のみご入札下さい。・ご質問は質問欄からお願いします。やメールでの照会にはお応え致しません。・ご質問は内容や終了前（概ね48時間以内）などによってはお答えできない場合があります。・商品の発送は郵便局が営業を行っています平日とさせていただきます。